2013年5月29日水曜日

「経済学を学ぶ」 岩田規久男 ちくま新書



アベノミクス。今起こっている日本の経済的な変化については、じつはまったくもって驚いていない。

というのも数年前から高橋洋一氏と岩田規久男氏の本とかインタビューはほとんど読んでいたゆえ。もちろん安倍首相と彼らとの関係性も知っていたので、安倍氏が自民党総裁に返り咲いた時に、まあこうなる事は“確信”に変わっただけなのでした。

ので、自民党が与党に返り咲いた時点ではなく、その前の安倍氏が総裁へと返り咲いた時点で、もっと株を買っておけば良かった......ととても後悔しています。← うそうそ・笑。

で、今回のお題は、「経済学を学ぶ」 岩田規久男 ちくま新書 です。

岩田規久男。言わずもがな、現在の日銀の副総裁。

総裁の黒田氏は財務省あがり。もうひとりの副総裁は日銀プロパー。

じつは最も日銀が人事で嫌がったのが岩田規久男氏とされています。

岩田氏の前職は学習院大学経済学部教授。

昔っからリフレ派、つまり金融緩和至上主義者としてのスタンスを崩していません。

でもって、10年前、立場ある人で理論を伴い明確に“リフレ”を唱えている人って、じつは、高橋洋一氏と岩田氏くらいしかいなかった。

経済学部教授とか、経済アナリストとか、経済評論家とか、ほんと星の数ほどいるけど、“たったふたりだけだった”という愕然たる事実に驚きますな。海外には浜田教授もいらっしゃったわけですけれどね。

まあ岩田氏が正しいのか正しくないのかは置いておいて、超少数派でありつつの“筋金入り”といいう部分は間違いないところでしょう。

その岩田氏が晴れて日銀副総裁になった。そこで昨今、岩田氏の本の再販ラッシュになっているよう。

まずは浜田教授の本が30万部とか売れたことが大きいでしょう。株という要素が大きいとは思いますけれど、それまで無名に近かった浜田教授の単行本がそれだけ売れるって日本人も捨てたもんぢゃないんだなー、とか個人的には感動しましたっけ。

で、岩田教授の再販本は、ほとんどが「リフレ」とか「日銀批判」を前面に出したものばかりなわけです。

そこで今回は「経済学を学ぶ」。

初版は1994年。バブルが破裂しつつ、まだ余韻が残っている時期ですな。

また経済学部の教授として「ごくごくまっとうなタイトル」とも申せましょう。

けどだからこそ「深い」のではないかと思いつつ、本棚から引っ張りだしてみました。

岩田氏としては、諸説ある経済学の中でも、先に述べた超リフレ派であります。そのスタンスにある教授が、極めてオーソドクスなタイトルを付けた新書の中で読者をどういった概念へと引っ張っていこうとするのか、ひとつはそれがポイントだと思います。

健康法とか美容法とかとまるで同じなのです。いろんなヤツがいろんなこと言っているわけです。また医学とかスポーツ生理学とかと同じく、昔のジョーシキがヒジョーシキになりつつも、昔の非常識を振りかざしつつ有名大学の教授とか新聞の論説委員とかに収まっている輩のほうが圧倒的多数なのが現実です。

ヤブ医者っていますよね。まさにあれです。

で、再読してみて良かったですね。

読みながら、いろんな具体的ケースが思い浮かびました。

たとえば........

最近個人的に「なーんだ」と思ったのが、3大キャリアのLTEスマホの通話料の件。

繋がるとか繋がらねぇとか、速いとか遅いとか、まさに藪の中。MNPがどうしたとか、表面的には激烈な競争が繰り広げられているように感じさせます。

けど、LTEスマホの通話料に関しては3社仲良く横並び。

30秒 21円。

一分で42円、5分だと200円超えです。

まあーリッチな方はどうでもいいとして、一般的なジョーシキとして、この値段どうっすか。

しかも3Gのような月々の無料通話分の設定はなく、にもわわらず通話に関してはあくまでも3G回線使っているわけで昔と同じなんす。

端末の代金をどう値引いて、ガラケーからスマホへの移行の壁をどう取り除くかに腐心はされているようですが、一度契約しちゃったら月々のみかじめ料はしっかりいただく.......この部分ではみんなで仲良くしようね~。みたいな意思が働いていないと、商品や規模や社風も大きく異る三社が仲良く一緒(同一価格)というのは、果たして健全な経済競争といえるのでしょうか。それとも計画経済なんすか、この国って・笑。

その明確な答えがこの新書では明文化されていました。ご紹介しましょう。

p122。「2 寡占企業の行動」

p123。「寡占企業の結託と競争」

以下、p124.より

寡占企業のの行動には次の相反する誘因が絶えず働いている。第一は、価格や生産量や設備投資などについて、競争を制限する方向で協調しあうことによって、寡占企業全体の利潤を高めようとする誘因である。

このような協調は結託とも呼ばれ、結託によって結ばれた協定をカルテルという。カルテルによって産業全体の利潤を引き上げ、それを企業間でうまくわけ合えば、どの企業もカルテルを結ばなかった場合よりも高い利潤を獲得することができる。

しかし日本やその他の先進主要国では、文書などを取り交わして価格を決めたり、各企業に生産を割り当てるといったカルテルを形成することは、原則的に禁止されている。しかしそのような明らかなカルテルではなく、暗黙のうちにカルテルが結ばれている場合がある。


とかね・笑

たとえば、今回の夏モデル。ドコモは業界の慣習を打ち破ってソニーとサムスンの二機種には特別な販売奨励金を出すことを決定した。これは端末代が明らかに安いiPhoneとの溝を埋め、ドコモからau、あるいはSBMへのMNPを阻止せんがためは明白でありましょう。

またこれまでの経緯からすると、ドコモからMNPする人は圧倒的にauという事実がある。

ここでドコモの方策により、ちと割くらいそうなのがSBM。そこでSBMはiPhoneの価格をさらに下げることを決定した、と。auは今のところ音無しでしょうか。

表面的には凄い競争している。ように見える。

けど、ARPUに関してはイヂっていないわけです。そっち土俵では戦っていないのですね・笑。

広告もそれこそ一般に目立つ部分での競争ですな。で・も・ね、ってことですね。

まあ何が言いたいのかと言えば、寡占企業の場合、競争しているように見える部分と握っている部分が共存しているのなんて当たり前のこんこんちきでしょ、って優れた経済学者は大前提で知っているってことなんですね。

また別の章では、分業が経済発展を促進し、もちろんそこには通貨とマーケット(商人)という装置が具体的に機能しはじめたから....みたいな歴史の流れを追った経済史が簡単に確認されているところがあります。

そこで、岩田氏はアダム・スミスを引用しています。

「分業は、人間の本性に潜む交換という性向から生じる」(「国富論」より)

この一文読んだ瞬間に「いいね!」ボタンとか勝手に想起してしまったワタクシでした・笑。

ネットの場合「共有」みたいな概念が前面に出ています。なんとなく社会主義的、共産主義的な概念にも個人的には感じられるのですが、もしかしたら本質的には「交換の欲望」なのかもしれません。

まあ勝手に思いついただけですが、何かこの新書を読むと、新しいウェブの捉え方ができるのではないか、ヒントがあるのではないか、と思ったりしました。

ということで、もうちょっとこの新書、真面目に読み込んでみようかなーとか思っているところでした。

報告、おわり。

いぢょ。


▶ Go to BEYOND THE MOTOR's TOP





-->

0 件のコメント:

コメントを投稿